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kmizuの日記

プログラミングや形式言語に関係のあることを書いたり書かなかったり。

筑波大学AC入試の時の昔話

少し前に、茂木健一郎に騙されて通信制高校からAO入試受けた結果wwww

というまとめが盛り上がっていました。人格批判が混じった酷いコメントや、AO入試のことを想像だけで語っているコメント*1があまりにも多くて辟易しました。辟易したので、実績が無くても合格できた私の昔話を書いてみることにします(その時点での基礎学力はあったからカウンターとして弱いのは残念です)。

まず、自分の経歴から。2002年度の筑波大学の情報学類AC入試*2合格者で、その後筑波大学大学院への進学を経て、現在は渋谷のスタートアップ企業に居ます。

筑波大学のAC入試を知ったのは、高等学校3年の秋でした。一応、中高一貫の進学校*3に通っており、学力も平均よりは上くらいでした。ですが、それまでに実績といえるものはありませんでした。コンクールで入賞した事もプログラミングコンテストで上位に入ったことも、所属していた生物部*4で主導的な立場にあったこともありません。

当時の私は歴史学に情熱を持っており、将来は歴史研究者になるという夢を持っていました。2年の時の文系・理系コース分けがあったときは、当然のように文系コースを選びました。

しかし、3年になってから、理系のクラスに転向したくなってきました。色々な理由はありますが、JavaHouse-Brewersという当時最大級のJavaメーリングリストでの殺伐とした議論を読みあさった結果、プログラミング言語というのは与えられるだけでなく、自分で仕様を考えたり作ったりできるのだ、という事を理解して感激した事が最大の理由でした。それから自分でプログラミング言語を作りたいと思うまでにさほど時間はかかりませんでした。

問題は、私が既に文系コースを選んでしまっていることでした。文系でも理系でもプログラミングの勉強はできますが、自分のプログラミング言語を作るために必要な知識を仕入れるなら情報系学部に行きたい。理系へのコース変更は可能でしたが、理系カリキュラムに途中から入るというデメリットを背負う必要がありました。

そのように悩んでいたタイミングで、弟から筑波大学にAC入試という制度があることを教えてもらいました。最初は消極的でしたが、これで受かれば情報系学部に行けるという魅力に抗えず、その数週間後にはAC入試を受験することを決心しました。筑波大学は国立大学で、そこそこ以上ではあったことと、AC入試に落ちても通常の試験は受けられることから、親からは簡単に許可をもらえました。

問題になったのは実績の無さ…以前に時間の無さでした。AC入試受験を決心したのは金曜日で、その翌週の水曜日が自己推薦書を含む各種書類の提出締め切り(必着)でした。提出書類の一部には担任からの推薦(形式的なもの)が必要でした。その日の内に職員室にダッシュしたところ、幸運な事に担任の先生が居たため、必要な書類がなくてゲームオーバーという事態は避けられました*5

金曜の夜からは時間との戦いでした。募集要項にある、「問題解決能力を重視する」という言葉を信じて、生物部での活動やちょっとしたJavaプログラム、文化祭で使用したクイズプログラムといった事を元にして、どのような知見が得られたか、どのような点が失敗だったか、筑波大学に入って何をやりたいかを必死で書きました(たとえば、ぷよぷよもどきのプログラムを作ることで初めて再帰の意義が理解できたことなど)。また、プログラミング言語作成における初歩の初歩である四則演算のパーズ・評価を行うプログラムをなんとか作って、それに対する自己評価も書き込みました。

月曜の朝には書類は完成し、自分がこれまで作ったプログラムをCD-Rに焼いたものを揃えて提出することができました。この時点では、あくまで最低要件が揃ったに過ぎず、「運が良ければ合格できるかもしれないな…」くらいに考えていました。ところがどっこい、書類選考(一次選考)を通過した旨と面接日程の通知が1週間後くらいに来ることになりました。何故通ったのかは不思議でしたが、これはチャンスということで面接の前日・当日は学校を休んで京都←→筑波大学を往復しました。

いよいよ面接当日。緊張しながら、面接2時間前には待合室に来ていました。自分の先に面接を受ける二人が待合室に居ました。この二人とは合格後も長い付き合いになるのですが、それはまた別の話。三人で雑談することで多少は気持ちが落ち着きましたが、とにかく面接の内容が全く想像が付かないので対策も何も考えていませんでした。

面接本番、始まってみるととても和やかな雰囲気。書類についての説明を求められた後は、単なる世間話のような雰囲気になっていました。この時点で合否が確定していたのかわかりませんが、その後は、プログラミング言語を作る夢の直接の動機になったfj.comp.oopsやJavaHouse-Brewersでの議論について夢中で語っていただけでした(今思うとドン引きです)。

そしてそれからさらに1週間後か2週間後、面接当日に会った内の一人がつくば在住だったので、受験番号を教えて合否を確認してもらったところ、合格していたのでした。評価されるべき実績など無かったのですが、それで合格できた理由を考えると

  • プログラミング言語を作る」という相対的には少ない「やりたい事」を持っており、それについて空気を読まずに熱く語ったこと
  • 普通高校生は読んでないfj.comp.oopsやJavaHouse-Brewersを読みたおしており、やっぱりそこでの議論について空気を読まずに熱く語ったこと
  • その他の活動についても、やっぱり空気を読まずに熱く語ったこと

辺りなのかなあと思います。ともかく、華々しい実績が無くても合格できることはできるのです*6 。自分一人だけだと偶然性が高いですが、情報系ACで入学前に目立った実績を持たない人は、多数居ました*7

以下は、AO/AC入試についての簡単な比較です。昔話ではないですが、一口にAOとか言っても色々あるんだなということがわかってもらえればと思います。

AO入試というと、とかく華々しい実績が必要という認識が先行しがちです。しかし、実際には大学によって同じAO入試という名前でも求める学生は異なります。その事は、北海道大学筑波大学の二つを比べてみただけで明らかです。

北海道大学では「AO入試では、学力を含めた多様な個性・能力・資質・適性・目的意識や意欲を、提出書類や課題論文また面接等によって総合的に評価します。一芸一能入試ではありませんので、基礎学力のあることが条件です。」と書かれており、一般のAO入試のイメージと異なるタイプの学生を求めているようです。特に課題論文があるというのは、AO入試のイメージとは異なるのではないでしょうか。

筑波大学のAC入試に関しては、一般的なイメージに近いような事が書かれています。学力に関しても合格者には、結果的に成績がよい人が多くなっていますが、出願要件ではありません。主として、入学後、志望する学群・学類のカリキュラムに支障なく適応できるかどうかを確認するための参考として使われます。と書かれているくらいです。その他の質問に対する答えを見てもわかりますが、北海道大学AO入試と比較すると、学力以外の比重が高く、特別な実績を必要としてない事がわかります。そして何より、ここに書かれていることは、私自身と周囲を見た結果からもそれほど外れていないと言えます。

その他の大学のAO入試についても調査してみたいところですが、長くなり過ぎるのでとりあえずここまでにします。

*1:コンクール出場などの実績が無くては合格できない等

*2:AC入試とはアドミッションセンター入試の略称で、名前こそ違いますが、AO入試の一種と呼んで差し支えありません。筑波大学では、特色を出すためか、学「群」や学「類」といった他大学と違った用語が多用されます

*3:京都市内北野白梅町付近の某高校

*4:ちなみに、自分でテーマを立てて研究する方法の初歩は生物部で学んだのではないかと今になると思います

*5:金曜の夕方に担任の先生が居なければ自分の運命は変わっていたでしょう

*6:入学後についてはまた別の話ですが、総合的にみると情報系ACな人はそれなりの実績出してる人は少なくありません

*7:2003年度の登さんや吉田さん、2006年の古橋さんをはじめ、受験前の時点で実績を持っている人が大量に来る年もありました。