kmizuの日記

プログラミングや形式言語に関係のあることを書いたり書かなかったり。

個人的に好き(な/だった)技術書籍10選

プログラマのための技術書籍○選」とかよく見るじゃないですか。あれ、自分はどうにも好きになれないというか、後進を自分がたどってきた道に引きずり込みたいだけじゃねーかと思うのが多いです(全部がそうだとは言いません)。なので、今回のエントリでは、あくまで、「私が好きな」技術書籍を10冊紹介することにします。単に思い出深いというだけの書籍も入っており、間違っても「オススメ書籍」ではないのでご注意を。

オブジェクト指向入門 第2版 原則・コンセプト (IT Architect’Archive クラシックモダン・コンピューティング)

オブジェクト指向入門 第2版 原則・コンセプト (IT Architect’Archive クラシックモダン・コンピューティング)

オブジェクト指向入門 第2版 方法論・実践 (IT Architects' Archiveクラシックモダン・コンピューティング)

オブジェクト指向入門 第2版 方法論・実践 (IT Architects' Archiveクラシックモダン・コンピューティング)

最初は、メイヤー先生の『オブジェクト指向入門」第二版。ちなみに第一版は今からすると内容が古すぎるので読むのはやめた方がいいです。この本の何が面白いって、メイヤー先生の強烈な思想がそこかしこから伝わってくるところです。特に、序盤の方の、「方法論」批判はとても痛烈で、「どうしても必要な場合にのみそれを使うこと」といった謎のアドバイスに疑問を持ったことのある方は読む価値があります。

ただまあ、DbCとかのコンセプトを既に知っている読者にとっては退屈な部分も多いであろうことも一方で否定しません。メイヤー先生の独特の語りが好きな人は読みましょう。ちなみに、この本、タイトルに偽りありの代表格であり、全然オブジェクト指向入門ではありませんし、メイヤー先生のOOPの定義はやや独特なので(ただし、本文中でちゃんと「定義」しているのがエライところ)、その点は注意です。

次は、Date先生の「データベース実践講義」です。この本もタイトルに偽りありというか、まったくもって現在のいわゆるRDBMSを扱うために有用な知識は身につきません。この本は読み物として読むのが正解というか、Date先生のSQL & 今のRDBMSディスり芸のために読むのが正解な気がします。といっても、Date先生、リレーショナルモデルの祖であるCoddと一緒に働いていた経験があるだけあって、いい加減なことを書いているわけではなく、現在のいわゆるRDBMSSQLがいかにリレーショナルモデルからかけ離れているかを口を酸っぱくして語ってくれます。この本でいわゆる現在のRDBMSSQLを扱うのに必要な知識は「ほとんど」身につきませんが、本来のリレーショナルモデルと現在の実装との差異について知りたい方にとっては色々発見があるのではないでしょうか。

Parsing Techniques (Monographs in Computer Science)

Parsing Techniques (Monographs in Computer Science)

超マイナーな上に日本語訳もされていませんが、次はParsing Techniques 2nd Editionです。この本、Parsing Techniquesとタイトルにあるのは伊達ではなく、LLやLR、CYKといった古典的なパーザはもちろん、PrologのDCGや、recognition based grammar、parallel parsing、boolean grammarといったマイナーな(?)話題に至るまで、構文解析に関する話題のかなりをカバーしています。一家に一冊あると安心できる、そんな書籍です。

Programming in Scala: A Comprehensive Step-by-step Guide

Programming in Scala: A Comprehensive Step-by-step Guide

おなじみコップ本の原著です。あえて原著を選んだのは、最初にこの本を読んだのが原著であり、また、初めてのScala DaysでOdersky先生にサインをもらったという思い出深いものだからです。内容についてはコップ本の書評をみれば色々あるでしょうから割愛します。

C言語ポインタ完全制覇 (標準プログラマーズライブラリ)

C言語ポインタ完全制覇 (標準プログラマーズライブラリ)

次は前橋和弥さんの「C言語ポインタ完全制覇」です。C言語のポインタの文法がどうにもよくわからんなーと頭をひねっていた大学1年生の頃、この本を読んだことがその後のC言語の理解にとてもとても役立ちました。内容については記憶している限りではANSI C 89ベースなので、今だとやや古い記述もありますが、大筋で今でも役に立つ内容だと思います。

Java 謎+落とし穴 徹底解明 (標準プログラマーズライブラリ)

Java 謎+落とし穴 徹底解明 (標準プログラマーズライブラリ)

次も同じく前橋和弥さんの「Java 謎+落とし穴 徹底解明」です。実は、この本を読む時点で、既に書いてある内容についてはあらかた知っていたので、前橋さんのJavaに対する語りを読みたくて買ったようなものです。まあ、正直言うと、この本に書いてある落とし穴の大部分は現在のJavaだと克服されていますし、克服されていないものも、まあ慣れれば大したことがないものが多い気がしますが、前橋さんのJavaディスりが面白く、ついつい読みふけってしまったのを覚えています。

Bruce EckelのJavaプログラミングマスターコース―徹底探究!Javaのしくみとオブジェクト作法〈上〉

Bruce EckelのJavaプログラミングマスターコース―徹底探究!Javaのしくみとオブジェクト作法〈上〉

  • 作者: ブルースエッケル,Bruce Eckel,安藤慶一
  • 出版社/メーカー: ピアソンエデュケーション
  • 発売日: 1999/10
  • メディア: 単行本
  • 購入: 1人 クリック: 8回
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Bruce EckelのJavaプログラミングマスターコース〈下〉徹底探究!Javaのしくみとオブジェクト作法

Bruce EckelのJavaプログラミングマスターコース〈下〉徹底探究!Javaのしくみとオブジェクト作法

  • 作者: ブルースエッケル,Bruce Eckel,安藤慶一
  • 出版社/メーカー: ピアソンエデュケーション
  • 発売日: 1999/10
  • メディア: 単行本
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これは良書かというと必ずしもそうではないし、内容も今となっては古いですが、自分を本格的なプログラミングの道に誘ってくれた忘れがたい書籍です(ちなみに著者のBruce Eckel氏は今はもうJavaを見限った(?)ようで、Atomic Scalaという書籍を出したりしています。ご本人にScala Daysで会ったりもしました)。この本でデザインパターン病にかかったのもとても思い出深いです。ちなみに、デザインパターン病はOOPを学ぶ過程でかかる人が多い病で、学生のうちに経験しておくと予後不良にならずに済みます。

Introduction to Algorithms (MIT Press)

Introduction to Algorithms (MIT Press)

  • 作者: Thomas H. Cormen,Charles E. Leiserson,Ronald L. Rivest,Clifford Stein
  • 出版社/メーカー: The MIT Press
  • 発売日: 2009/07/31
  • メディア: ペーパーバック
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これは、邦訳が既に出ていますが、自分が研究室の輪講でやったのは原著だったので、原著を掲載しています。"Introduction"とついていますが、日本語の入門本にあるようなテキトーな感じのものではなく、様々なアルゴリズムについて、割と詳しくみていく本です。入門系の本としては、計算量を"証明"する課題などがあるのは割と珍しいかもしれません(英語の本だとよくありますが)。この本、研究室の輪講の期間では終わらなかったので正直言って紹介するのは気がひけたのですが、アルゴリズムに対する自分のアプローチのあやふやさを認識することになったという意味で良い本でした。

Purely Functional Data Structures

Purely Functional Data Structures

知る人ぞ知る名著、Purely Functional Data Structures(通称PFDS)です。これについては、k.inabaさんの(半分)ネタ解説を読む方がよっぽど面白いのでここでの紹介は割愛します。

詳説 正規表現 第2版

詳説 正規表現 第2版

これも思い出系ですが、日本語の正規表現解説書籍としては一時期、かなり一般的だったのではないでしょうか。大学2年の頃、簡易正規表現エンジンを作ってみようとして(そして作りました。NFAベースのごく簡単なマッチャですが)買ったのがこの本だった記憶があります。様々な処理系における正規表現の違いや、NFA、POSIX NFA、DFAの違いなど、一通り解説してあります。

今だと、「正規表現技術入門」

正規表現技術入門 ――最新エンジン実装と理論的背景 (WEB+DB PRESS plus)

正規表現技術入門 ――最新エンジン実装と理論的背景 (WEB+DB PRESS plus)

の方がいいかもしれません。

というわけで、あやふやな記憶を頼りに、思い出深い技術書籍を10冊無理やり紹介してみました。